註・「五月三日の会通信第7号」(1971・6・Ⅶ)に転載されたn〈事〉闘争突入時における表現ヴィジョンを示す二つのビラ(原文縦書き)を書写。ビラ2の表題にある「五・一ビラ」とは、ビラ1「日付のむこうへの出立」のことで、五月八〜九日のドイツ文学会総会の会場でも配布されている。なお、ビラ2における[ ]の部分は数行を包括する大きな }に代えて書写段階で付記した部分です。

◉(ビラ1) 日付のむこうへの出立

一九七〇年・四・八 松下処分教授会の粉砕闘争、四十一名逮捕。

一九七一年・四・八 仮装被告(団)、ビラ「いくつかの報告とお願い」を配布。同じ日に裁判所は、松下研究室への立入禁止仮処分を決定。

      四・九 正午までに研究室内の私物を持ち出せ、と教養部長から通告。正午から七時間、松下他数名を中心にして研究室で自主講座。二度にわたる教職員の退去要求を粉砕。夜、カギ穴にガムをつめて、運動する研究室としての六甲空間へ出立。当局は朝までかかって室内の物品を某所に留置したが、空間性そのものに手をふれることは不可能であった。裁判所へ異議申立書提出→口頭弁論開始五月?

     四・一四 研究室再占拠闘争。いたるところに巨大なラクガキが出現。

     四・二一 二年ぶりに授業に使用されはじめたB一〇九再占拠闘争。哲学のK講師は、追求に何一つ答えられないまま休講を宣言して逃亡。

     四・二四 教養部長から松下あてに、再び授業妨害すれば告訴するという文書による警告。これを直ちにマス・プリし、自主講座資料として配布。

     四・二八 松下、沈黙したまヽB一〇九空間に存在し続けることによって大学権力、授業……などのギマンを粉砕。今後、毎週水曜午后にこのような拡大自主講座をおこなう、という授業開始宣言。

     五月の予定
 ワイ小なギルド集団の一つの独文学会の解体斗争。
 研究室裁判の開始。これを自分の問題としてとらえる人は、だれでも異議申立書を提出することによって債務者=被告として登場できます。研究図書の返還要求→裁判もおもしろくなってくるでしょう。

     六月の予定
 <   >裁判の第四回公判期日は、まだ不確定(三月十日の第三回公判で権力は完全に破産し、制裁々判の被告に対する決定も公判調書の作成もできないでいる。)ですが、仮装被告団は、六月十五日を設定しています。
 全ての仮装被告は、本質的な求釈明書を5月末までに松下あてに送付した上で、これからの法廷で、その文書を媒介にして発言してください。

     七月の予定(刑事、民事、人事の三つの重層性に注目!)
 七・一九〜二十三、松下処分に関する人事院の第一回公開審理、兵庫県遺族会館(高速神戸線、花隈駅から北へ徒歩六分)代理人募集中。
 ここに表現してある日付のむこうへ、どのように出立していくか、が全ての〈私〉につきつけられています。資料のほしい人や、意見を提起される人は、左記へ連絡されたし

   一九七一・五・一
                     神戸市灘区高羽楠丘十
                             松下  昇

◉(ビラ2) 五・一ビラ以後

 〈私〉の表現に対する権力の重層した圧殺の構造が、いまだかってないような相貌で展開されつつあります。これらを同時に、統一的に解体していくためにも、まずn〈事〉斗争のいくつかの経過を記します。

◯ 刑〈事〉裁判
 一 第四回公判はついに六月にはおこなわれない様子です。しかし六月十五日午後一時から仮装被告団は、神戸大学学生会館で、裁判に関するあらゆる問題についての討論を計画しており、各被告の求釈明書などの資料を飛翔させていくつもりです。
 二 五月十七日松下と橋本を申立代理人とする特別抗告申立書を最高裁へ提出しました。これは第一、二、三回公判および制裁々判で明らかに破産した「法廷等の秩序維持に関する法律」に対する批判であるばかりでなく裁判制度、法の根拠に対する挑戦でもあります。
 三 B一〇九教室を媒介とする私たちの斗争に対し、大学当局は告訴の策動(追加六・二早朝、橋本君など逮捕)をすすめ、私に対しては構内立入禁止を通告しつつ、存在することがそのまま罪になるような条件をつくろうとしていますが、これは逆にかれらの敗北を早めるでしょう。なお、B一〇九の哲学の永続的休講は神戸地裁の永続的休廷と対応しています。

◯ 民〈事〉裁判
 一 研究室閉鎖(四・九)に対して私(四・十二)、村尾氏(四・一七)、脇阪氏(五・三)、私の子供たち(五・五)から異議申立書を提出しましたが、国家はこの共同斗争に怖れをなしたのか、五・二〇にあらためて私を被告とする訴状を提出し、事件を簡裁から地裁へ移送することによって前述の文書を無効にしようと意図しています。いまのところ弁護士不在のまま裁判斗争に入ることになりそうですが、次項にのべる問題を含めて未踏の領域を拓いていきたいと考えています。
 二 研究図書、百数十冊の返還要求がくりかえされています。研究室の単数性、固定性に対する研究図書の複数性、運動性は重要な暗示を与えてくれそうです。私は、いま、それらの一冊ずつの本の著者、訳者、出版者、所有者などに対するアピールを準備中です。
 なお、権力がこの問題を刑〈事〉、民〈事〉のいづれの方法で裁判にもちこむか不確定で、これは逆に、この問題に限らず刑〈事〉裁判と民〈事〉裁判の統一公判要求の根拠を導きだしているように思われます。

◯ 人〈事〉院審理
 一 第一回公開審理が、七月十九日から二十三日まで(午前十時〜午後五時)兵庫県の遺族会館(神戸市花隈町一一六 TEL34ー2952、35−0348)で開かれます。宿泊もできるので希望者は連絡して下さい。
代理人名簿の作成は、まだやっていません。私たちが多忙ということもありますが、それ以上に、刑〈事〉、民〈事〉斗争にかかわる人はその度合いだけすでに人〈事〉院斗争へかかわっているはずだと考えるし、また、代理人名簿に名前をかす位ならよい、という発想をうち破っておきたいからです。代理人の資格、期限はありませんが、具体的には、当日会場へ来られた人が直接、公平委員会に申し出て着席することになるでしょう。
 二 出席する人は、少くとも次の資料が必要です。
  ・処分審査説明書
  ・処分理由説明書
  ・処分に対する不服の理由
    [上記3資料は]あらためてプリントする余裕がないのでどこかに転載されているものを各自で、準備、検討して下さい。
  ・処分者の答弁書
  ・被処分者の反論書
    [上記2資料は]七月十一日と十八日のそれぞれ午后一時から神戸大学学生会館で開く準備討論集会で配布する予定です。

◯ その他の〈事〉柄
 一 大学構内立入禁止通告を無効にし、かつ大学における生協、選挙などの意味を公開の場で追求するために、生協総代選挙に立候補するという仮想組織論の実験をしています。教職員の対立候補が現われましたが、私の公開質問状に答えないので選挙はまだおこなわれていません。くわしくは別のビラに書きます。
 二 前項と関連して、教職員組合あてに、私を組合員であるとみなすかどうかについて公開質問状を出していたのですが、五月三十一日の回答によると「組合費を滞納しているので(学会費を想い出します!)権利停止の組合員であるから、処分について組合は積極的に動かない。もし組合員資格や処分について総会を開けば、あなたに不利な結論になることは明らかなので、そっとしてある」ということでした。ここにみられる問題は日本の労働者運動の現状とも交差してくるので、これからも持続的にかかわっていきます。

   一九七一・六・一
               松下 昇